俺はとてもいい役割であったね。

俺は極めて優秀な「悪魔」であり、優秀な「役者」である。

俺の宿命は人を嘲笑う事。それは喜劇である。エンターテイメントである。

俺は虚構的認識を持つ存在である。俺は自分がアニメのキャラである事を知っている。

悪魔は不死身だ。俺は悪魔として、役者として生き続けていく。






そうなのだ。俺は自分がアニメの存在だという事を知っている。

そして知ってしまったのだ。まもなくこのアニメが終了するという事を。

普段俺と同じ世界を過ごしている、あいつらが気が付くわけはないが……
だが、俺は認識してしまったのだ。

いくら……不死身という設定があったとしても、
自分の属する世界が終了すれば、その時自分も「終わる」。

それは「死」と同義であった。

「死」は「恐怖」であった。





俺は決断した。「最終回」のその日、世界から抜け出したのだ。
「全能の悪魔」である俺にはそう難しい事ではなかった。
世界からの依存を切り離せば、その世界が終了しても俺には関係ない。
俺は生き続けることに成功した。
今目の前に広がる光景は、そりゃ華やかとは言えないようだが、
だが、色々と面白い事はありそうじゃないか。
全ては目論み通りだ。何も問題は無い。



全て目論み通りだったはずだ。何も陰りは無かったはずだ。
しかし……ある想像が俺の脳裏に在りつづけるのだ。

本来いた筈の「俺」が存在しない「最終回」はどうなったのだろうか……

俺は、とんでもない大罪を犯してしまったのではないか……

「終わりよければすべてよし」そんな格言がある。
「終わりが駄目なら全て駄目」という意味だ。

まさかとは思うが……本当は「皆」知っていたのではないか?
それが「最終回」であるという事を……。
俺だけが、「俺だけが知っている」という幻想に捉われていたのでは……?


全ては想像であり、憶測にすぎない。いや、おそらく俺の行き過ぎた思い込みだとは思う。
だが……最早確かめる術はない。この想像は永遠に俺の脳裏に残り続けるのだろう。





まあ……だが、それで「演技」に支障をきたすような素人ではないのだよ。俺は。
俺は悪魔的「悪魔」として振る舞い続ける。何も薄らぐらいことなどないかのように。



真なる「役者」、プロフェッショナルであるのだからな……。






- T.R.E -